「自宅の茶」のススメ

縁結び工房は、アジアと日本の伝統文化のご縁を結ぶ場所です。また、茶道からつながる世界をお届けします。

8月のある日、いつもは新宿のシェアオフィスHAPON新宿でお稽古している生徒さんを自宅にお招きし、「自宅の茶」を行いました。

私が師事する江戸千家では、実践である「自宅の茶」が提唱されています。
茶道は、先生のお宅の茶室や、お教室に行って稽古するもの、と考えていらっしゃる方が多いかと思います。また、茶会や茶事は、茶室でないとできない、との考えもあるかもしれません。

ですが、茶室がなくても、床の間がなくても、部屋を少し片づけ、ポットにお湯を用意して、お客様のことを思いながら準備をすれば、「自宅の茶」の始まりです。
気の利いた点心(中華の点心ではなく、茶事の懐石よりも軽い食事)と、美味しいお酒があれば、お客様も喜んでくださるでしょう。


(↑床の間がなければ、棚の上に花を活けて)

大切なのは、自分で考えて自分で準備することです。茶入を清め、抹茶を掃いて入れる。茶碗や茶杓を選ぶ。
自宅の茶をやってみると、普段、先生が何気なくしてくださっていることでも、案外手間がかかるものだとわかります。

茶碗や茶入が無いからできない~、という方もいらっしゃるかもしれません。
でも、可愛らしいカフェオレボウルや、ちょっと渋めのご飯茶碗を抹茶碗として使ったり、ガラスの入れ物やセンスの良い瓶などを茶入に見立てたり、アイデア次第で何とでもなるのです!


(↑和室がなかったり、正座は足が辛ければ、テーブルで)

例えば、お父様の誕生日に「自宅の茶」をやると決めます。

お父様が秋田県のご出身だったら、秋田No.1人気の新政酒造「No.6 Xタイプ 純米大吟醸」を手に入れて、秋田の珍味・棒アナゴを酒肴として取り合わせる。普段はあまり買うことの無い、高級な松花堂弁当をいただく。
食事が終わったら、これまた秋田銘菓の「さなづら」を出し、心をこめて薄茶を点てる(もちろん、お濃茶ができれば、お濃茶を薄茶の前に)。

お酒を飲みながら、酒肴を食べながら、きっとお父様は幼いころの思い出や、故郷への思いを語ってくださることでしょう。
きっと普段とは違う、心のこもった誕生会になることでしょう。

まずは家族や親しい友人を招いて、その人のことを思って、「自宅の茶」を催してみませんか?

こちらの「茶の湯のススメ」には、イギリスのマナーハウスでの茶会や、京都の大文字山での野点など、イメージが膨らむアイデアがいっぱいです。形式だけにとらわれない、自分らしいもてなしの方法が見つかるかもしれません。

東南アジアの織物や工芸品を使った