雛祭りの季節に味わいたい和菓子と本のご紹介です!

縁結び工房は、アジアと日本の伝統文化のご縁を結ぶ場所です。また、茶道からつながる世界をお届けします。

雛祭りの菓子というと、関東に生まれ育った者にとっては雛あられや菱餅が定番ですが、関東と関西では、思い浮かべるものが違うかもしれません。大人になってから初めて、関西には、『引千切(ひちきり)』というものがあると知りました。

ひちきり

こちらは、京都の末富さんの「引千切」です。新宿高島屋で求めることができました。

引き千切った餅に餡を載せるので、引千切。
子を抱いているような形なので、いただき。
あこや(真珠)貝の形を模しているので、あこや。
同じ菓子でも、名前も違えば、表現方法も違っています。その店、その店の思いやこだわりが、菓子を通して伝わってくるように感じます。

いただき

こちらは、大阪の菊寿堂義信さんの「いただき」。一見、末富さんの「ひちきり」と同じお菓子には思えないのですが、宮中の戴餅をルーツとする雛菓子だそうです。

そして、この雛祭りの時期になると、毎年読み返す小説があります。それは、「利休にたずねよ」で直木賞を受賞した山本兼一さんの、「とびきり屋見立て帖」シリーズです。
幕末の京都を舞台にした、古道具屋の若夫婦の物語なのですが、第一巻の「千両花嫁」は、雛祭りの日の誓いから物語が動きだします。


新妻のゆずさんは、京で三本の指に入る茶道具やのお嬢様で、お流はわかりませんが茶道の若宗匠との縁談が進んでいました。
そんな彼女は、お店の二番番頭の真之介と恋に落ち、駆け落ち同然で家を出て結婚。二人で力を合わせて、京の三条大橋のすぐ近くに開いた古道具屋「とびきり屋」を舞台にして、幕末の荒波の中を生き抜いていきます。

茶道具はもちろん、嫁入り道具や刀など、様々な道具が登場します。本物の道具には、人に四の五の言わせない力があります。人を救う力があります。そして、その道具を扱う人間にも、どんな厳しい状況でも生き延びようとする、強い力があります。

茶道を嗜む人にとってはもちろんですが、幕末好きの方、おもてなしの心を知りたい方、様々な方にお勧めしたい本です。

東南アジアの織物や工芸品を使った