《旅する茶籠~パリ編》初秋のフォンテーヌブローの森を歩く

縁結び工房は、アジアと日本の伝統文化のご縁を結ぶ場所です。また、茶道からつながる世界をお届けします。

友人が、優しい旦那様とパリ郊外のフォンテーヌブローの森に居を構えて3年が経ちました。「いつか遊びに来て!」「いつか、きっと遊びに行く!」を何度か繰り返し、ようやく先日、訪ねることができました。

その日は、あいにくの雨でしたが、森の中に佇む古民家を囲む広い庭はすでに紅葉が始まっていて、秋の花もそこここに咲いていて、パリからの通勤圏であることを忘れさせる自然の豊かさです。
一緒に行った私の母は、お宅に着くなり、「お庭のお花を見せて!」と興奮気味に催促。友人も、お子さんたちも、みんな優しいので、雨の中を花探しに付き合ってくれました。

庭の片隅の納屋。芝刈り機などが入っているそう。素敵な暮らしに憧れますが、庭仕事は苦労も多いかもしれません。

お宅に入ると、食べきれないほどの御馳走が用意されています! 何種類ものチーズやハム、一生分はあるのではないかというほどの鴨のロースト、フランスではブームが定着したという豆や穀物を使ったお惣菜、そして華やかなちらし寿司。
日本から持参した秋田の銘酒「まんさくの花」で乾杯し、3年ぶりの再会を喜びました。

食事の後は、お茶の時間です。私と母がお茶の準備をしていると、子供たちは興味津々でお菓子やお道具を見ていました。
友人がマカロンも用意してくれていたので、日仏菓子のマリアージュとなり、テーブルには、日本でお茶をいただく時とはまた少し違う華やかさが生まれていました。

お茶の後、車で10分ほどのところにあるフォンテーヌブロー宮殿を案内してもらい、そこからまた10分ほどのところにあるバルビゾン村にも連れて行ってもらいました。
19世紀中頃、この村に集まったミレーを始めとする画家たちは、バルビゾン派と呼ばれました。「落穂拾い」もこの近くで生まれたそうです。

友人が、「辻仁成さんもこの村が好きでよく来るらしいです」と言っていた言葉が頭の片隅に残っていて、帰国後、ネットで検索してみました。
氏の滞仏日記の中に、「ミレーが愛したバルビゾン村を歩く」という文章があり、そこに、落穂拾いに対する私の認識を新たにする部分がありました。
「落穂」とは具体的には何か、そして、それを拾うとはどういう意味なのか。地味な作品なのに、どれほど時間が経っても人を惹きつけてやまない理由が、そこに見えた気がしました。

ミレーのアトリエ。水色のドアや窓が印象的。

辻仁成さんと言えば、タイ滞在経験が長い私としては、タイの老舗ホテル『マンダリン・オリエンタル・バンコック』を舞台に繰り広げられる「サヨナライツカ」を真っ先に思い出します。
こちらは、熱帯の湿度や温度を感じさせる恋愛小説ですが、バルビゾン村を歩く辻さんに、新たな魅力を感じました。

「サヨナライツカ」の主人公二人が出会って別れて再会するまでは25年の歳月が流れますが、私と友人は、また近いうちに会えるといいな。

東南アジアの織物や工芸品を使った