7月、星に願いを。白南風を待ちながら、和菓子と点心。

縁結び工房は、アジアと日本の伝統文化のご縁を結ぶ場所です。また、茶道からつながる世界をお届けします。

7月7日は「七夕」ですね。
子供の頃は身近だった「七夕祭り」も、大人になるにしたがって縁がなくなってしまう方も多いのではないでしょうか。私も、その一人でした。
でも、タイやラオスに、仕事で9年間暮らしていた間に、七夕は再び、私にとって身近な行事となりました

タイでもラオスでも、日本語や日本文化を現地の方々に伝えることを目的とする機関に勤めていたので、七夕には、職場のロビーに笹が飾られ、来館者の方々が、誰でも気軽に短冊に願いを書けるようになっていました。
織姫とひこ星のラブストーリーが東南アジアの人々の心をも打つのでしょう。七夕は、とても人気のある行事でした。
特にラオスでは、普段は日本文化や日本語に関係の無い学生さんなども私の勤めるセンターに来て、短冊に願いを込めていました。その様子に、密かに感動していた私です。

バンコクに住んでいた時の、七夕前のとある休日のこと。
友達と、彼女の幼稚園児の娘・Aちゃんと、私の3人で、日本人愛用のスーパーに買い物に行きました。
スーパーの斜め前にあるパン屋さんには、笹飾りがあり、短冊が置かれていました。
Aちゃんは、短冊が置かれた台に駆け寄ると、楽しそうに願い事を書きはじめました。すると、お店の中からタイ人の店員さんが出てきて、私たちに訊ねました。

「七夕の歌は歌える?」と。
「歌える!」間髪入れずにAちゃんが答えます。
「じゃあ、ここで歌ってくれない?」と店員。
「いいよ!」とAちゃん。

私が「否」と答える間もなく、路上ライブは始まってしまいました。
*『ささのはさらさら のきばにゆれる~』と大声で歌い始めたAちゃんの脇で、私も彼女の母も、渋々小声で歌いました。次第にギャラリーが集まり始め、4,5回繰り返し歌って、盛況の中、ライブは終了となりました。
ギャラリーからは温かい拍手を、店員さんからはお礼の言葉を頂戴し、そそくさとその場を後にした私たちです。
(*童謡「たなばたさま」 作詞:権藤花代・林柳波)

茶道をきっかけに着物を着るようになり、また、タイやラオスとのご縁から、それらの国の布を愛するようになった私にとって、七夕は、より一層、大切にしなければならない行事となっています。
なぜかといえば、織姫とひこ星の物語は中国から渡ってきたものですが、日本には、古くから続く『棚機(たなばた)』という行事があったことを知ったからです。

『棚機』は、禊の行事で、選ばれた乙女が清い水辺の小屋にこもって布を織り、その布を神様にお供えし、お祓いをするというものだそうです。この神事が7月7日の夕方に行われたことから、『七夕』と書いて『たなばた』というようになったといいます。

中国の物語と、日本の神事が合わさって現代の『七夕』があることを胸に刻んで、七夕の夜には天の川を見上げ、神様に日頃の感謝の気持ちを伝えたいと思います。

こちらは、鶴屋吉信さんの『星願い』という名の美しいお菓子です。金箔・銀箔で表された織姫とひこ星の、一年に一度きりの逢瀬が、夜空に流れる天の川を挟んで表現されています。
s-星願い_1

s-星願いと抹茶↑夏らしく、ガラスの器やガラスの茶器と組み合わせてみました。

七夕の夜、家族や親しい方々と、天の川に見立てた素麺や、星のように美しいお菓子をいただいて、ロマンチックな時間を過ごされてみてはいかがでしょうか?

↓そうめんは、端をタコ糸で結んで茹で、その結んだ部分を切って盛り付けると、流れるイメージに。茹でたオクラをスライスして、星に見立てます。
s-七夕素麺_emmusus-f_七夕点心8
↑お庭やバルコニーで、夜空を見ながら大切な人と、軽く点心なんていうのも、粋ですよね。

七夕が終わると、あとは梅雨明けを待つばかりです。
梅雨が明けてから吹く南風を『白南風(しらはえ/しろばえ)』というそうです。

初夏の明るい真っ青な空を思い描きながら『白南風』を待ち、葛粉やわらび粉を使ったプルプル・フルフルの涼しげなお菓子をいただくのもこの時期の素敵な過ごし方ですね。
s-白桃水まんじゅうと抹茶_1お湯ではなく、氷水を使用して抹茶を点ててみました。ガラスの器は、アイスクリームやサラダ用のボールです。涼しげでしょ!
s-白桃水まんじゅう菓子は、銀座あけぼのさんの『白桃 水まんじゅう』
ぷるぷるのジェリー状の生地に包まれた桃色の白桃餡に、暑さも忘れてしまいそうです。

東南アジアの織物や工芸品を使った