タイと日本の秋の月の愛で方|十三夜とロイクラトン

縁結び工房は、アジアと日本の伝統文化のご縁を結ぶ場所です。また、茶道からつながる世界をお届けします。

少しずつ日が短くなり、少しずつ木々の葉が色づき、都心にいても、秋が深まっていくのを感じます。

2020年の10月の終わりのお稽古は、日本の『十三夜(10/29)』と、タイの『ローイクラトン(10/31)』と、西洋の『ハロウィーン(10/31)』を目前にしていたので、菓子選びもおのずと、それらの行事を意識したものとなりました。


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【富山を代表する五郎丸屋の季節の「薄氷」と、これまた富山の銘菓・月世界本舗の「月世界」】

『十三夜』は、『中秋の名月(十五夜/旧暦の8月15日)』の約1か月後の月(旧暦の9月13日)。
『十五夜』が新月から15日目のほぼ満月であるのに対して、『十三夜』は新月から13日目の夜の月ですので、十五夜よりも少し欠けている月になります。
十五夜と十三夜のどちらか一方しか愛でないことを「片見月」といいますが、両方の月を楽しみ、収穫に感謝することが良しとされていることを、皆さんはご存知でしたか?

以前、私が暮らしていたタイでは、中秋の名月と同様の中秋節というお祭りが旧暦の8月15日にありました。華僑の多いタイでは、中国から伝わったお祭りも華やかで、中秋節が近づくと、街のあちこちで月餅が売り出されます。
特にタイらしいのが、『ドリアン月餅』なるものです。中の餡がドリアンで、遠くにいても、その香りでそれだとわかるほど強烈。タイ人には人気があるようですが、日本人の間では、好き嫌いが分かれていました。

中秋節が終わると、タイでは、10月か11月の満月の夜(太陰暦で12月の満月の夜)に、『ローイクラトン』という、これまた月を愛でるお祭りがあります。
川がもたらしてくれる恩恵に感謝し、日ごろの自らの穢れを流すために、満月の夜に川辺に立ち、バナナの葉で作ったクラトンという灯篭を川に浮かべ流します(ローイ=ลอย=浮かぶ)。

日本もタイも、秋の月を鑑賞する行事が二度もあるわけですが、日本の十三夜が、満月ではなく「少し欠けた月」を愛でる点が、大きく異なるところでしょうか。

少し欠けた物や、歪んだ形を美しいと感じるのは、日本独特の感性のように思います。
不規則な楕円形の、まるで潰れた靴のような形の茶碗や鉢を『沓形』といい、織部焼の沓茶碗や沓鉢がその典型でしょう。
千利休の高弟・古田織部は、沓形の茶碗を創作し、博多の茶人・神谷宗湛を招いた茶会でその茶碗を用い、宗湛から「ヘウゲモノ也」とのコメントをもらったと、記録に残っているそうです*。

Apple社の一口噛んだリンゴのロゴは、「黄金比」で構成されているので人間が美しいと感じるデザインになっていますが、日本人が感じる美的感覚とは、また少し違っているようにも思います。

*参考:原色茶道大辞典(淡交社)

東南アジアの織物や工芸品を使った