ソンクラーンに菩提樹を支えることを想う

縁結び工房は、アジアと日本の伝統文化のご縁を結ぶ場所です。また、茶道からつながる世界をお届けします。

タイは今、一年で一番暑い季節です。この季節には、タイの国花であるゴールデンシャワーが、そこここに咲き乱れます。

そして、酷暑期とも言われるこの時期に行われるのが、「ソンクラーン」。「水掛け祭り」です。
毎年4月の中旬に行われ、街角や住宅街などで、互いに水を掛け合うものですが、その様子を写真や映像などで目にされた方も多いのではないでしょうか。

暑い季節なので、軽く水を掛け合う分には楽しいのですが、トラックの荷台に氷水入りのドラム缶を置いて、車を走らせながら、道行く人に向けてバケツやホースでぶちまけたり、大型の水鉄砲で色のついた水をまき散らしたりと、過激な掛け合いも行われています。

タイ国政府観光庁のタイ観光案内サイトによると、ソンクラーンとは、【太陽の軌道が12ヶ月の周期を終え、新たに白羊宮(おひつじ座)に入る時期を祝う伝統行事】で、【もともとは、仏像や仏塔、さらに年長者などの手に水を掛けてお清めをするという伝統的な風習】だそうです。

白羊宮というのは、黄道十二宮の1番目で、春分(3月21日頃)から穀雨(4月20日頃)に当たりますが、暦のずれが生じるため(ここでいう暦はヒンズー暦に基づいているそう)、現在のタイでは、このうちの、4月13日から15日の3日間をソンクラーンの期間と定めています。
ソンクラーンはタイの新年ともいえ、人々は休みを利用して実家に帰り、家族や友人たちと時を共にします。

こちらは、大好きなタイの画家 Arnan Ratchawang-inn 氏の作品です。
幻想的で宗教的な作品を多く描かれている方で、それまでもポストカードはたくさん購入していたのですが、ある時、バンコクのギャラリーで運よくオリジナルを見つけたので、購入しました。
手に入れたものの、何が描かれているのか、長年わからないままにしていました。何か宗教的な行事の準備をしているのだろうと、ぼんやり思ってはいたのですが。

それが、最近になって、いろいろな検索ワードで調べてみたところ、とうとうわかりました。

絵にある、先端が2つに分かれてYの字のようになった棒を「マイカムポー」というそうです。ソンクラーンに、この「マイカムポー」を持って寺に行き、菩提樹に供えるものなんだそうです。
私は、北タイのチェンマイに住んでいたことがあるのに、実際に自分の目で見たことはなかったのですが、どうやら北タイの伝統のようです。

タイのお寺の多くには、菩提樹があります。「マイカムポー」で菩提樹を支えることが、仏教の教えを支えることにつながり、ひいては自らの信仰も支えることにつながると信じられているそうです。

長引くコロナ禍に、この絵の意味がわかったことは、偶然ではないような気がします。「困難な時にこそ支えあうことが大切」と、改めて教えられたような気がするのです。

タイの国花であるゴールデンシャワーですが、原産はタイではなく、ビルマ(ミャンマー)やインドだそうです。
ここで使用している写真は、ミャンマーに赴任している知人からいただいたもので、首都ネピドーで撮影したものということです。

タイでも、ミャンマーでも、民主化を求めるデモが続いています。この日本でも、ジェンダー問題に限らず、平等や人権に関する課題が山積しているように感じます。
年々、厳しくなる地球環境とどう折り合いをつけていくかが問われている今、人と人とが「マイカムポー」のように支えあっていくことこそが、大切なことではないでしょうか。

東南アジアの織物や工芸品を使った