梅雨にも負けず、古織様と「乙」に過ごそう ~ 織部忌によせて~

縁結び工房は、アジアと日本の伝統文化のご縁を結ぶ場所です。また、茶道からつながる世界をお届けします。

梅雨の時期が来ると、雨対策も考慮に入れつつ、服や靴を選んだりしますよね。

私の場合、着物で出かける必要のある時は、雨が降っていれば対応はすぐに決まります。
ですが、「雨が降るかもしれない」という時に、迷いが深まっていきます。
雨コートを持つか持たないか、草履は雨用にするかしないか、傘は長傘にするのか折り畳みにするのか。

でも、昨年に続き、2021年も、コロナ禍ということで、着物を着る機会が激減しているので、和服の装いに困る回数もおのずと減ってきています。
反対に、家にいる時間が長くなっているので、いつも以上に読書をする時間も生まれてきます。

師事している先生の稽古場には、同年代の女性が多くいて、同じ釜の湯で茶を飲み続けているのですが、その中に、特に道具へのこだわりや、学びが深い方がいます。平時は、忙しい仕事の合間に美術館に通い、週末に日帰りで地方の美術館への弾丸旅行もしばしば。学びが止まりません。

そんな彼女が貸してくれたのが、コロナ禍の読書時間にうってつけの『へうげもの』です。

『へうげもの』とは、戦国時代から江戸初期にかけての、武将であり、茶人である「古田織部」の物語。
【武か数奇か。織田信長から壮大な世界性を、千 宗易から深遠な精神性を学んだ「へうげもの」、古田左介。立身出世を目指し ながら、茶の湯と物欲に魂を奪われた男の物語(「講談社Book倶楽部」 より)】なのです。

 

甲ではなく、「乙」を愛した「古田織部」という偉大な茶人の物語なのではありますが、綺羅、星の如く有名茶人が登場する「茶人オールスターズ」の物語でもあります。

主人公は、古田織部。武家の茶道である柳営茶道(織部流)の祖です。

茶の湯、そして人生の師として、
千家流の祖・千利休。
当時のトップクラスの文化人・細川幽斎。

仲間&ライバルとして、
細川幽斎の息子で、利休七哲の一人である、小倉藩初代藩主・細川忠興。
織部の義理の弟で、利休七哲の一人である、キリシタン大名・高山右近。
織田信長の弟で、有楽流の祖・織田有楽斎。

弟子として、
遠州流の祖・小堀遠州。
上田宗箇流の祖・上田宗箇。
宗和流の祖・金森宗和。

他にも、信長、秀吉、家康などの天下人や、
明智光秀、石田三成、前田利家、加藤清正などなど、戦国武将も勢揃い。

また、人間だけではなく、名物と呼ばれる茶道具も次から次です。

本当にキラキラ輝いています! 登場人物&道具の豪華さに、クラクラします。

武将たちの、道具の開発や作庭、築城にかける情熱も大変なもの。戦国時代の数寄者は、命がけです。

そして、師・千利休同様に天下一の茶人となった織部は、師と同じ運命を辿っていきます。
命日は、6月11日。

織部忌によせて、御所丸写しの茶碗でお茶を一服いただきたいと思います。
御所丸茶碗は、古田織部がデザインし、島津義弘が朝鮮との交易で使っていた船「御所丸」で朝鮮から運ばれてきたことから、この名がついたと言われています。

菓子は、葉山 日影茶屋の「れんこん餅」です。

東南アジアの織物や工芸品を使った